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義務化直前!
職場のパワーハラスメントの防止のために講ずべき措置について

職場のパワーハラスメントについては、厚生労働省の調査でも過去3年以内にパワーハラスメントを受けたことがあると回答した人や、都道府県労働局への相談も増えてきています。実際にはもっと多くの従業員が被害を受け、トラブルとなっていると考えられます。

職場のパワーハラスメントは労働者の人格を傷つけ、仕事への意欲や自信を喪失させ、ひいては心の健康を悪化させ、休職や退職に至る場合があります。特に近年は、人手不足で人材確保が難しくなっており、労働者の休職や退職が会社へのダメージとなります。また、パワハラを受けている本人だけではなく、周囲の労働者もパワハラを見聞きすることで、仕事への意欲が低下したり、会社の対応によっては、会社への不信感を生み出してしまったりしかねません。

職場のパワーハラスメント防止措置につきましては、大企業では令和2年6月1日より義務化されていますが、中小企業では令和4年4月1日より義務化となります。

中小企業にとっては、大企業並みの体制づくりなどは難しいですが、会社として社内トラブル防止や人材確保のために、しっかりと措置をとっていきましょう。具体的な指針に基づいてご案内いたします。

目次

事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

周知・啓発をするに当たっては、職場におけるパワーハラスメントの防止の効果を高めるため、その発生の原因や背景について労働者の理解を深めることが重要です。その際、職場におけるパワーハラスメントの発生の原因や背景には、労働者同士のコミュニケーションの希薄化などの職場環境の問題もあると考えられます。そのため、これらを幅広く解消していくことが職場におけるパワーハラスメントの防止の効果を高める上で重要であることに留意することが必要です。

① 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること

・就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を規定し、当該規定と併せて、職場におけるパワーハラスメントの内容及びその発生の原因や背景を労働者に周知・啓発すること。

・社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に職場におけるパワーハラスメントの内容及びその発生の原因や背景並びに職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を記載し、配布等すること。

・職場におけるパワーハラスメントの内容及びその発生の原因や背景並びに職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を労働者に対して周知・啓発するための研修、講習等を実施すること。

② 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること

・就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること。

・職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者は、現行の就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、これを労働者に周知・啓発すること。

相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

相談窓口においては、被害を受けた労働者が萎縮するなどして相談を躊躇する例もあること等も踏まえ、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、職場におけるパワーハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるパワーハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにしましょう。
労働者と会社の信頼関係が大切です。労働者が思い切って相談したのに、会社側が十分な対応をせず、信頼を裏切らないようにしましょう。また、それによって、外部に駆け込まれて大きな問題になりかねないので、できるだけ社内で対応できるようにしましょう。

③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること

・相談に対応する担当者をあらかじめ定めること。

・相談に対応するための(研修)制度を設けること。

・外部の機関に相談への対応を委託すること。

④ 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること

・相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとすること。

・相談窓口の担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること。

・相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行うこと。

窓口の具体的な運用に関しましては、厚生労働省から「パワーハラスメント社内相談窓口の設置と運用のポイント」が公開されています。

職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

事実確認が遅れると、当事者や関係者の記憶が曖昧になったり、感情的なことから思い込みがあったり、証拠がなくなってしまう可能性があるので、事後の事実関係の調査は非常に重要です。また、調査を適正に行わなかった場合に、精神的苦痛を受けたとして、損賠賠償を請求されることもありますので、調査マニュアルなど策定したり、弁護士など外部に依頼したりするなどしっかりとした対応をしましょう。

⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること

・相談窓口の担当者、人事部門又は専門の委員会等が、相談者及び行為者の双方から事実関係を確認すること。その際、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも適切に配慮すること。
また、相談者と行為者との間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講ずること。

・ 事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたが、確認が困難な場合などにおいて、法第30条の6に基づく調停の申請を行うことその他中立な第三者機関に紛争処理を委ねること。

⑥ ⑤により職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと

・事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復、管理監督者又は事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講ずること。

・法第30条の6に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を被害者に対して講ずること。

⑦ ⑤により職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置を適正に行うこと

・就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書における職場におけるパワーハラスメントに関する規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること。あわせて、事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪等の措置を講ずること。

・法第30条の6に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を行為者に対して講ずること。

⑧ 改めて職場におけるパワーハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること

・職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針及び職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者について厳正に対処する旨の方針を、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に改めて掲載し、配布等すること。

・労働者に対して職場におけるパワーハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施すること。

 なお、職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講ずることが必要です。そのためにも、研修は定期的に実施する必要があります。

そのほか併せて講ずべき措置

⑨ 相談者・行為者等のプライバシー(性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含む)を保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること

・相談者・行為者等のプライバシーの保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、相談窓口の担当者が相談を受けた際には、当該マニュアルに基づき対応するものとすること。

・相談者・行為者等のプライバシーの保護のために、相談窓口の担当者に必要な研修を行うこと。

・相談窓口においては相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていることを、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に掲載し、配布等すること。

⑩ 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

・就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、パワーハラスメントの相談等を理由として、労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を規定し、労働者に周知・啓発をすること。

・社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に、パワーハラスメントの相談等を理由として、労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を記載し、労働者に配布等すること。

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