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大切な従業員を守る!
~「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」~

 今年の4月1日より中小企業にも職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが義務となりました。労働施策総合推進法の改正・指針の中で「事業主は、取引先等の他の事業主が雇用する労働者又は他の事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為(暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等)により、その雇用する労働者が就業環境を害されることのないよう、雇用管理上の配慮を行うことが望ましく、被害防止のための取組を行うことも、その雇用する労働者が被害を受けることを防止する上で有効である旨が定められています。

 このような背景から厚生労働省より「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」が作成されましたので、特に今回はカスタマーハラスメントの考え方と企業の取り組みについてマニュアルから抜粋して概要をご案内いたします。

目次

カスタマーハラスメントとは

①マニュアルでのカスタマーハラスメント

企業や業界により、顧客・取引先への対応方法・基準が異なることが想定され、明確に定義づけられませんが、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により労働者の就業環境が害されるもの」と考えられます。

・「顧客等」には、実際に商品・サービスを利用した者だけでなく、今後利用する可能性がある潜在的な顧客も含みます。

・「当該クレーム・言動の要求の~社会通念上不相当なもの」とは、顧客等の要求の内容が妥当かどうか、当該クレーム・言動の手段・態様が社会通念上不相当であるかどうかを総合的に判断すべきということで、その会社や業界の常識や慣習だけでは判断しないと考えられます。

・「労働者の就業環境が害される」とは、労働者が人格や尊厳を侵害する言動により身体的・精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために能力の発揮に重大な悪影響が生じる等の当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。

②カスタマーハラスメントの判断基準

顧客等の行為への対応方法は、その業種や業態、企業文化により、企業ごとに違いがあると考えられますので、各社であらかじめカスタマーハラスメントの判断基準を明確にしたうえで、企業内の考え方、対応方針を統一して現場と共有していくことが重要と考えられます。
判断基準につきましては、以下の2点から判断することが考えられます。

・顧客等の要求内容に妥当性はあるか
顧客等の主張に関して、まずは事実関係、因果関係を確認し、自社に過失かないか、または根拠のある要求がなされているかを確認し、顧客等の主張が妥当であるかも判断します。
顧客等の要求の内容が妥当性を欠く場合の例としては、企業の提供する商品・サービスの瑕疵・過失が認められない場合や、要求の内容が、企業の提供する商品・サービスの内容とは関係がない場合が考えられます。

・要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当な範囲か
顧客等の要求内容の妥当性の確認と併せて、その要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当な範囲であるかを確認します。
要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な言動の例としては、要求内容の妥当性にかかわらず不相当とされる可能性が高いものとして、身体的な攻撃(暴行、傷害)、精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉棄損、侮辱、暴言)、威圧的な言動、土下座の要求、継続的・執拗な言動、不退去や居座りなどの拘束的な行動、差別的な言動、性的な言動、従業員個人への攻撃・要求が考えられます。また、要求内容の妥当性に照らして不相当とされる場合があるものとして、商品交換の要求、金銭補償の要求、謝罪の要求(土下座を除く)が考えられています。

一方、顧客等の要求内容に妥当性が無いと考えられる場合であっても、企業が顧客等の要求を拒否した際にすぐに顧客等が要求を取り下げた等の場合は、従業員の就業環境が害されたとは言えず、カスタマーハラスメントには該当しない可能性があります。
なお、殴る・蹴るといった暴力行為は、直ちにカスタマーハラスメントに該当すると判断できることはもとより、犯罪に該当しるものです。

カスタマーハラスメント対策の必要性

カスタマーハラスメントによる従業員・企業・他の顧客等への影響としては以下のようなことが考えられますので、企業の対策が重要となります。

・従業員への影響としては、精神的な負担が大きく、業務のパフォーマンスが低下することをはじめ、深刻な場合には健康不良や精神疾患を招き、休職や退職につながるケースもあります。

・企業への影響としては、顧客対応に要する時間が主な負担になっており、直接的なやりとりのみで1時間以上かかるものをはじめ、社内での対応方針の検討や、状況に応じて弁護士や警察といった外部との相談対応の時間を含めると、相当な時間的コストを強いられることもあります。

・他の顧客への影響としては、現場に居合わせた他の顧客等においても、業務遅滞によってサービスが受けられないことや、利用環境の悪化などの影響が考えられ、また、店舗や企業のブランドイメージの低下につながることも考えられます。
また、企業及び事業主として、適切な対応をしていない場合、被害を受けた従業員から企業責任を追及される可能性があります。

企業た取組むべきカスタマーハラスメント対策

①事業主の基本方針・基本姿勢の明確化、従業員への周知・啓発

・組織のトップが、カスタマーハラスメント対策への取組の基本方針・基本姿勢を明確に示す。

・カスタマーハラスメントから、組織として従業員を守るという基本方針・基本姿勢、従業員の対応の在り方を従業員に周知・啓発し、教育する。

②従業員(被害者)のための相談対応体制の整備

・カスタマーハラスメントを受けた従業員が相談できるよう相談対応者を決めておく。または相談窓口を設置し、従業員に広く周知する。

・相談対応者が相談内容や状況に応じ適切に対応できるようにする。

上記対応を実現するためには、人事労務部門や法務部門、弁護士等の外部関係機関と連携できるような体制を構築するとともに、具体的な対応方法をまとめたマニュアルを整備し、相談対応者向けに定期的に研修等を実施することが有効です。

③対応方法、手順の策定

・カスタマーハラスメント行為への対応体制、方法等をあらかじめ決めておく。

④社内対応ルールの従業員等への教育・研修

・顧客等からの迷惑行為、悪質なクレームへの社内における具体的な対応について、従業員を教育する。

⑤事実関係の正確な確認と事案への対応

・カスタマーハラスメントに該当するか否かを判断するため、顧客、従業員等からの情報を基に、その行為が事実であるかを確かな証拠・証言に基づいて確認する。

・確認した事実に基づき、商品に瑕疵がある、またはサービスに過失がある場合は謝罪し、商品の交換・返金に報じる。瑕疵や過失がない場合は要求等に応じない。

⑥従業員への配慮の措置

・被害を受けた従業員に対する配慮の措置を適正に行う(繰り返される不相当な行為には一人で対応させず、複数名で、あるいは組織的に対応する。メンタルヘルス不調への対応等)。

⑦再発防止のための取組

・同様の問題が発生することを防ぐため、定期的な取り組みの見直しや改善を行い、継続的に取組を行う

⑧①~⑦までの措置と併せて講ずべき措置

・相談者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、従業員に周知する。

・相談したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、従業員に周知する。



以上、かなりざっくりとした概要ですが、「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」にはカスタマーハラスメントの近年の発生状況や、対応や取組の具体例、チェックシートなども記載されているので活用をお勧めいたします。
現実はマニュアル通りにはいかないことも多いですが、社内で共有すべき考え方や、混乱した際に基本に立ち戻れるツールとしても十分に役に立つと思います。

厚生労働省の「明るい職場応援団」のサイト内の「ハラスメント関係資料ダウンロード」から、今回ご案内のマニュアル等がダウンロードできます。

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