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改正育児・介護休業法が順次施行されます。
~取り急ぎ令和4年4月1日施行の対応を~

 少子高齢化に伴う人口減少下において、出産・育児による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児を両立できる社会の実現が重要ですが、令和元年度の育児休業取得率は、女性で83.0%に対して、男性は7.48%(令和2年度は女性81.6%、男性12.65%)で、男女の取得率に大きな差がありました。

また、男女の育児休業の取得期間についても、女性は9割近くが6ヶ月以上となっている一方で、男性は8割が1ヶ月未満となっています。こういったことが今回の改正の背景になっています。

出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにするため、子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設、育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付ける、として令和3年6月9日公布された改正育児・介護休業法が令和4年4月1日から順次施行されますが、今回は4月1日から義務化される内容についてご案内いたします。 

令和4年10月1日施行の内容につきましては、年度明けの落ち着いたころに、ご案内させていただきます。

目次

育児休業を取得しやすい雇用環境整備が必須です

育児休業と産後パパ育休(令和4年10月1日施行)の申し出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下のいずれかの措置を講じなければなりません。
なお、雇用環境の整備の措置を講ずるに当たっては、指針で以下のようにされています。
①短期はもとより1か月以上の長期の休業の取得を希望する労働者が希望するとおりの期間の休業を申出し取得できるように配慮すること
②雇用環境の整備の措置を講ずるに当たっては、可能な限り、複数の措置を行うことが望ましいものであることと

①育児休業・産後パパ育休※に関する研修の実施

全労働者を対象とすることが望ましいですが、少なくとも管理職については、研修を受けたことがある状態にすることが必要です。
社内に対象者が少なかったりしても、職場環境の整備として有用であると考えられます。
また、労働者の社会人としての教育にもつながることが期待できます。
※産後パパ育休については令和4年10月1日から対象

厚生労働省から社内研修用資料、動画が公開されています。

②育児休業・産後パパ育休※に関する相談体制の整備(相談窓口設置)

相談体制の窓口の設置や相談対応者を置き、これを周知することを意味します。
窓口を形式的に設けるだけでなく、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることが必要です。
また、労働者に対する窓口の周知等により、労働者が利用しやすい体制を整備しておくことが必要です。
本人の希望に添える形で取得しつつ、職場で孤立することなく、復帰がしやすくなるために重要な役割となります。
※産後パパ育休については令和4年10月1日から対象

③自社の労働者の育児休業・産後パパ育休※取得事例の収集・提供

自社の育児休業の取得事例を収集し、当該事例の掲載された書類の配付やイントラネットへの掲載等を行い、労働者の閲覧に供することを意味します。
提供する取得事例を特定の性別や職種、雇用形態等に偏らせず、可能な限り様々な労働者の事例を収集・提供することにより、特定の者の育児休業の申出を控えさせることに繋がらないように配慮することが必要です。
中小企業では、過去の育児休業取得実績がなかったり、あってもかなり古い話になるかもしれません。
あくまで、育児休業を取得しやすい環境の整備なので、逆効果になるようでしたら、無理にこの措置を取らなくても良いかもしれません。
※産後パパ育休については令和4年10月1日から対象

④自社の労働者への育児休業・産後パパ育休制度※と育児休業取得促進に関する方針の周知

育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する事業主の方針を記載したものを、事業所内やイントラネットへ掲示することを意味します。
会社(社長)の考えや気持ちを従労働者に直接伝える良い手段になるかと思います。
※産後パパ育休については令和4年10月1日から対象

妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認をしましょう

本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、事業主は育児休業制度等に関する以下の事項の周知と休業の取得意向の確認を個別に行わなければなりません。
指針では、労働者による育児休業申出が円滑に行われるようにすることを目的とするものであることから、取得を控えさせるような形での周知及び意向確認の措置の実施は、法第21条第1項の措置の実施とは認められないものであること、としています。
また、育児休業申出に係る労働者の意向を確認するための措置については、事業主から労働者に対して、意向確認のための働きかけを行えばよいものであること。(返事はなくてもよい)

①周知事項

・育児休業・産後パパ育休※に関する制度
・育児休業・産後パパ育休※の申し出先
・育児休業給付に関すること
・労働者が育児休業・産後パパ育休※期間について負担すべき社会保険料の取り扱い

※産後パパ育休については令和4年10月1日から対象

②周知方法・個別意向の確認の方法

面談、書面交付、FAX、電子メール等のいずれかによるとされます(FAX・電子メールは労働者が希望した場合のみ)
労働者が希望の日から円滑に育児休業を取得することができるように配慮し、適切な時期に実施することが必要です。
具体的には、
・妊娠・出産の申出が出産予定日の1ヶ月半以上前に行われた場合:出産予定日の1ヶ月前まで
・それ以降に申出があった場合でも、出産予定日の1ヶ月前までに申出が行われた場合は2週間以内、
 出産予定日の1ヶ月前から2週間前の間に申出が行われた場合は1週間以内など、できる限り早い時期に措置を行うことが必要です。
・出産予定日の2週間前以降に申出があった場合や、子の出生後に申出があった場合は、できる限り速やかに措置を行うことが必要です。

厚生労働省から個別周知・意向確認、事例紹介、制度・方針ポスター例が公開されています。

有期雇用労働者の取得要件が緩和されます

現行制度の育児休業につきましては、
①引き続き雇用された期間が1年以上
②1歳6ヶ月までの間に契約が満了することが明らかでないという要件があり、
また、介護休業につきましては、
①引き続き雇用された期間が1年以上
②介護休業開始予定日から93日経過日から6ヶ月を経過する日までに契約満了することが明らかでないという要件があります。
これが、改正後には、「引き続き雇用された期間が1年以上」は廃止になります。
ただし、正社員同様に労使協定により、勤続1年未満の労働者を除外することは可能です。
   
育児休業の取得要件の「1歳6ヶ月までの間に契約が満了することが明らかでない」については、改正前から変更ありませんが、育児休業の申出があった時点で労働契約の更新がないことが確実であるか否かによって判断されます。
事業主が「更新しない」旨の明示をしていない場合については、原則として、「労働契約の更新がないことが確実」とは判断されません。

就業規則の改定

具体例としましては、以下のような規定になっている場合は、それぞれ①を削除することになります。
(育児休業)
有期雇用労働者にあっては、次のいずれにも該当するものに限り休業をすることができる。
①引き続き雇用された期間が1年以上←削除します
②1歳6ヶ月までの間に契約が満了することが明らかでない
(介護休業)
有期雇用労働者にあっては、次のいずれにも該当するものに限り休業をすることができる。
①引き続き雇用された期間が1年以上←削除します
②介護休業開始予定日から93日経過日から6ヶ月を経過する日までに契約が満了することが明らかでない



少子高齢化社会である以上は、今後も育児・介護休業法は変わっていくものと考えられますが、会社側も、社会の背景やこれから入社してくる労働者、特に若い労働者との意識のギャップを理解して、少しずつでも変わっていく必要があるのではないでしょうか。
出産育児で1~2年職場から離れてしまうこともありますが、昨今の人手不足を考えれば、代わりの人材が確保できる補償もないので、「復帰してくれる」と考えても良いのではないでしょうか。
出産育児があっても、安心して働ける職場の整備は、会社存続のための重要な対策になっていくのではないでしょうか。

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